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フィリピンの国花

国花「サンパギータ(Sampagita)」

フィリピンの国花

フィリピンの国花は「サンパギータ(Sampagita)」です。タガログ語でジャスミンの一種の「アラビアジャスミン(Jasminum sambac)」のことです。

「永遠の愛を誓う」を表すタガログ語の「Sumpa-kita」がこの花の名の語源です。

サンパギータの伝説

フィリピンの国花「サンパギータ(Sampagita)」の名は、「永遠の愛を誓う」という意味のタガログ語「Sumpa-kita」からきました。このことにまつわる悲しい恋の物語があります。


フィリピンにスペイン人がやってくる前の大昔、今のマニラ近郊にバリンタワク(Balintawak)とガガランギン(Gagalangin)という2つの集落がありました。2つの集落の間は竹で作られた頑丈な柵でへだてられていました。

バリンタワクの領主にはロジータ(Rosita)というとても美しく優しい娘がいました。彼女は小さい頃に母親を亡くし、4人の侍女と一緒に暮らしていました。

美しいロジータには多くの若者が愛を語りました。誰一人としてロジータを振り向かせることができない中、彼女の心を射止めたたった一人の青年、それがガガランギンの領主の息子、デルフィン(Delfin)だったのです。

2人の親は隣接する集落の領主であり敵対関係にありました。しかし誰も2人の愛を止めることはできません。満月の夜になると2人は長く連なる竹の柵の一番端で密かに会うのでした。


そんなある日、2つの集落の間で事件が起こりました。

ロジータが暮らすバリンタワクの兵士が竹の柵を壊してしまいました。バリンタワクの領主であるロジータの父は竹の柵を作り直すように命じました。ガガランギンの領主であるデルフィンの父は部下に様子を見に行かせました。戻ってきた部下は驚くべきことをデルフィンの父に告げました。バリンタワクの兵士たちが、今までよりも5mガガランギン側に柵を作っているというのです。

怒ったデルフィンの父は、すぐさま使者をバリンタワクに送り猛烈に抗議し、すぐに柵を元の位置まで戻すように要求しました。訴えを聞いたロジータの父も激怒します。1mたりとも土地は奪っていない。先祖から引き継いできた場所に柵を設けているだけだ。

戻ってきた使者の報告を聞いたデルフィンの父は怒り狂います。そして来たるべき戦いに向けて準備を始めます。武力を以てしても奪われた領土を取り戻すと。

ガガランギンが戦いの準備を進めているという知らせはすぐにバリンタワクにも伝わりました。ロジータの父が戦いの準備を始めたことはいうまでもありません。戦いはもう目前でした。


ガガランギン軍が出撃を数日後に控えていたある日、ガガランギンの領主であるデルフィンの父は急に病に倒れます。病は極めて深刻でデルフィンの父は危篤状態に陥りました。デルフィンは領主の息子。彼は父に代わって戦いを率いることになってしまったのです。

デルフィンが戦いを率いる。侍女たちからの知らせを聞いたロジータは気が気ではありませんでした。デルフィンは彼の父親と違い戦闘の経験がありません。そんなデルフィンが戦場に出たら。

ロジータはデルフィンに使者を送ろうとしました。戦いを止めて欲しい、この争いをなんとか落ち着かせるようにデルフィンの父に頼んでほしい。しかし遅すぎました。彼女が使者を送ろうとした翌日、戦いは始まったのです。

激しい戦いが何日も続きました。多くの命が失われ、デルフィンもまた深い傷を負いました。昏睡状態に入り朦朧とする意識の中、デルフィンは従者に最後の頼みを告げました。自分が死んだあと、いつもロジータと会っていた竹の柵の外れに埋めて欲しい。こう告げるとデルフィンは息を引き取りました。

デルフィンが死んだ。恋人の死を知ったロジータもまた悲しみから病に倒れました。各地から医者が呼ばれましたが、深い悲しみに打ちひしがれたロジータを誰も救うことはできません。死を前にしたロジータは父に頼みました。自分の亡骸を竹の柵の外れに眠っているデルフィンの横に埋めて欲しいと。


それから長い年月が経ち、2つの集落もいつの間にか消えてしまいました。誰もの記憶からガガランギンやバリンタワクのこと、そして、デルフィンとロジータのことも消え去りつつあったころ、スペイン人がフィリピンにやって来ました。彼らはマニラの街を作り、ガガランギンとバリンタワクがあった場所にも人が住むようになりました。

しばらくすると、かつて2つの集落があった場所に住むようになった人々から奇妙な噂が伝わるようになってきました。5月の満月の夜になると若い女性の可憐な声が聞こえてくる。「Sumpa kita! Sumpa kita!(誓います!私は愛を誓います!)」と。

声の先を見てもそこには誰もいません。そこには小さな白い花が咲いているだけでした。他の花とは違うとても良い香りがする小さな白い花が。

毎年5月の満月の夜になると可憐な声が聞こえてくる。そこには小さな白い花が咲いているだけ。奇妙に思った街の人たちは、花が咲いている場所を掘り返して見ることにしました。

恐る恐る掘ってみる人たち。彼らの前に現れたのは寄り添うように埋められた2つの亡骸でした。そして白い花の根の先は、2つの亡骸の口までつながっていました。それを見た町の長老が思い出しました。デルフィンとロジータの悲しい愛の物語を。

この話はまたたく間にフィリピン中に伝わりました。そしてロジータが小さな白い花を通してデルフィンに伝えた「Sumpa kita」という言葉は、2人の永遠の愛を象徴する白い花の名前となりました。「Sampagita(永遠の愛を誓う)」

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